電池のお話の続き 〜速度論と平衡論〜
ヒロです。
前回の更新から7ヶ月もたってしまいました。
毎日更新を目標に意気揚々と始めたものの、仕事が忙しく1日サボってしまったらズルズルと7ヶ月経過していました(長すぎ)
これからはゆるゆると、しかし少しでも多く書いていこうと思いますので、たまたま立ち寄っていただいた方は別記事も読んでいただけるとうれしいです!!
それでは最早書いた記憶も消え失せた前回の続きです。
まだ読んでないよ~って方はこちらからどうぞ。
前回、電解液には大きく分けて2種類あるという話をしました。
簡単におさらいすると、
水系電解液・・・安全だけど電圧低い(水は1.23ボルトで分解してしまうので)
非水系電解液・・電圧高くできるけどちょっと危険(燃えやすい)
ってな感じです。
しかし車のバッテリーによく使われている鉛蓄電池は水系電解液を使っているにもかかわらず電圧は約2ボルトとなっているのは何ででしょう?と問題提起をして長い冬眠期間に入ってしまいました(汗)
だいぶ長いこと引っ張ってしまったので、今回はすぐに答え合わせに行きましょう。
なぜ鉛蓄電池は電圧が高くても安定に作動しているのか?それは・・・
「平衡論的には安定でなくても速度論的には安定といえるから」です!!
で?
となりそうなのでこれから解説していきますが、その前にひとつクイズを出します。
「雪は気温0度以下でないと降らない、〇か×か?」
別にとんちクイズとかではないので普通に考えてみてくださいね。
それでは早速クイズの答えですが、
正解は「×」です!
なぜなら地上の気温が0度以上であっても上空の気温は氷点下以下になっているので雪ができるからです。
ただし、上空の気温が氷点下になっていれば必ず雪になるわけではもちろんありません。
大事なのは「地上に到達するまでに雪が溶けるかどうか」です。
溶けなければ雪ですし、溶けてしまえば雨になります。
雪が地上に到達するまでに十分な時間が経過するならば先ほどのクイズの答えは「〇」になりますが、実際はそれほど長い時間がかからないので、雪のまま降る場合もあるということです。
それでは本題に戻りますが、「十分な時間が経過して見かけ上変化が起こらなくなった状態」を平衡状態、といいます。
そしてそのような状態の現象について議論するのが「平衡論」です。
そして平衡状態に達するまでの速さを議論するのが「速度論」であると理解してもらえればいいかと思います。
そして鉛蓄電池の例で言えば、1.23ボルトで分解する水に約2ボルト(満充電時)の電圧がかかっているために電極上で水の分解が進行し、「平衡論」的には使えない電池となってしまっていますが、その分解速度がとても遅いために「速度論」的には使える電池とみなせるということになります。
とはいえ遅いながらも反応は進んでおり水が分解してしまうので、車のバッテリーは定期的に水の補充が必要となるわけです。
同じようなことが実はリチウムイオン電池にも当てはまり、平衡論的には成立していない電池を使うことができているおかげで皆さんのスマホは電池が長持ちするようになっているのです。
今日で一旦区切りがつきましたので次回は別の話題か、ネタがなかったら電池にまつわる別の話をしようと思います。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
それではまた次回!
電池のお話
ヒロです。
今日は電池について簡単にお話ししたいと思います。
なぜいきなり電池の話かというと、私の大学院の時の研究テーマだったからです。
私は工学部の化学系の学科を出ていまして、その時に電池を扱っていました。
一口に電池といっても色々ありますが、私の研究テーマはリチウムを使った電池についてのものでした。
というわけで今回は電池の構成要素の話に始まり、様々な電池を2種類に分けてみたいと思います。
今回の分類基準は「電解液」です。
本題に入る前に電池の基本構造についてお話していきます。
電池は大きく「正極」、「負極」、「電解液(電解質)」の3つの要素に分けることができます。
物質中には「電子」と呼ばれるものがたくさん存在しており、物質によって電子を放出しやすかったり、逆に受け取りやすかったりします。
基本的な電池の一つであるボルタ電池やダニエル電池には正極に銅、負極に亜鉛が使われており、亜鉛から放出された電子を銅が受け取ることで電気エネルギーが発生します。
つまり、正極と負極が意味するところは、
正極・・・電子を受け取るもの
負極・・・電子を放出するもの
となります。
電子の放出しやすさ・受け取りやすさは金属(本当は金属に限りませんが簡単のため)によって異なるので、異なる金属を導線で結べば電子は移動するわけです。
とはいえ銅もそんなにたくさん電子はいらないので、これだけだと取り出せるエネルギーはごくわずかです。
そこで必要になるのが電解液です。
電解液中にはプラスイオンとマイナスイオンが存在していて、それらが移動することで連続的に電気を流せるようになるのです。
大半の電池には電解液として水溶液が使われていて、例えば前述のボルタ電池には硫酸水溶液が使われています。
水溶液を使うメリットとしてはコストが低いことや、燃えないので安全なことなどがあげられます。
一方でデメリットとして挙げられるのが、水の分解電圧があまり高くないことによる電池設計の自由度の低さです。
中学や高校の実験で水の電気分解をやったことがある人も多いと思いますが、あれは電圧をかけることにより水が反応し水素と酸素が発生するものです。
そしてその時の理論電圧は1.23ボルトになります。
先ほど金属の種類によって電子の放出しやすさが異なると書きましたが、電子をより放出しやすい金属と、受け取りやすい金属を組み合わせることで、電池の電圧を高くすることが可能です。
しかし電圧を1.23ボルトよりも高くしてしまうと、水の分解反応が起こってしまい電池としては使えなくなってしまうのです。
では電圧を上げても電池として作動させるためにはどうしたらいいか。
今までの話を読んでいれば容易に想像がつくかと思います。
そうです、水を使わなければいいのです。
このような電解液は、水を使っていないということで、「非水系電解液」とよばれます。そのまんまですね。
非水系電解液には有機溶媒(油のようなもの)を使うことが多いので、「有機電解液」と呼ばれることもあります。
非水系電解液を使用した電池の代表格が皆さんのスマホにも使われている「リチウムイオン電池」です。
リチウムイオン電池は3ボルト以上の電圧があるため大きなエネルギーを取り出せるのが特徴ですが、その反面燃えやすい非水系電解液を使用しているために安全面での課題が大きいわけです。
ということで「電解液」という観点から電池を2つに分類するというのは、「水系」か「非水系」かということでした。
最後に一つ。
皆さんが普段乗っている車に使われている鉛蓄電池は電解液として硫酸が使われており、水系電解液のグループに入ります。
鉛蓄電池の電圧は約2ボルトです。
・・・
あれ?
水系電解液が使えるのは1.23ボルトまでじゃなかったの?
鉛蓄電池って大丈夫なの?
という疑問が生まれたところで今日はここまで。
次回をお楽しみに!
日本は貧乏?それとも・・・2
こんばんは。ヒロです。
前回に引き続き日本経済に関してよく言われる「国債」の問題について書いていきます。前回の内容をお読みになっていない方はこちらからどうぞ。
前回「国債とは何か?」という問いかけをしていましたので、まずはその答えからです。
ズバリ国債とは、
政府の負債
のことです。
つまり日本国債は「日本国政府の負債」であって、日本という国そのものの借金ではありません。なので私は「国の借金」という表現を好みません。
政府はあくまで国の一機関に過ぎないのですから。
ちなみに国の借金という観点でいうと、対外純資産というものがあります。
これは海外にどれだけ資産を持っているかということを示していますので、こちらの指標のほうが国としてお金持ちか否かを表すのに適しているように思います。
そしてこの対外純資産が世界で最も多い国がほかならぬ日本なのです。
(平成28年末時点で約350兆円)
ということで私の結論としては
「日本は貧乏ではない。国としてはむしろ世界一お金持ちである」
となります。
でもここで疑問が一つ生まれました。
「じゃあ日本国政府は1000兆円を超える借金をいったい誰からしてるんだろうか?」
この答えが出れば国債残高が積みあがっていく今の状況を憂えるべきかどうかの答えが出ます。これからその答えを書いていきますが、もし正解を知らない方はご自身で答えを考えてみてください。
考えてみましたか?
では正解発表に参りましょう。
日本国政府が借金をしている相手は、
あなたたちです。
正確にはあなたたち日本国民が銀行に預けたお金から政府が借金をしているわけです。
つまり日本国債に関し、日本国民は「債務者(お金を借りている側)」ではなく「債権者(お金を貸している側)」なのです。
ニュースや新聞などではよく「国民一人当たり〇〇万円の借金がある、だから日本はヤバイ!」と書かれたりもしますが、本来であれば「国民一人当たり〇〇万円を政府に貸し付けている」となるはずです。
もちろんすべての国債を日本国民の銀行預金で購入しているわけではありませんが、ここでのポイントは、「日本国債は国内で安定的に消化されている」ということです。さらに言うとそれらは日本円建てとなっており、日本政府はその気になれば子会社である日本銀行に通貨を発行させ、借金をチャラにすることも可能なのです。
というわけで私は「日本国債の残高で一喜一憂する必要はない」という考えを持っています。もちろん政府が無尽蔵に負債を拡大していいとは思っていません。かといって日本銀行にすべてを引き受けさせるべきとも思いません。
(なぜ日本政府は国債をすべて日本銀行に引き受けさせないのか。もしそうしたらどんなことが起こるのかについては、リクエストがあればいずれ書きたいと思います)
話が行ったり来たりしてしまったので、最後に結論をまとめます。
・日本は対外的には世界一のお金持ち
・日本国債の大部分は日本国民の銀行預金から買われている
・日本国債の残高が増え続けていることそのものはあまり大きな問題ではない
これだけ覚えてもらえれば今回の内容は十分です。
経済については今後も折に触れて書いていこうと思います。
それではまた次回!
日本は貧乏?それとも・・・1
こんばんは。ヒロです。
早速ですが1つ目のお勉強です。
記念すべき1つ目のテーマは「日本経済」です。
バリバリの理系で経済学なんて習ってこなかった私が、独学で勉強する中で「ココは大事だ」と思ったポイントをご紹介します。
というわけでタイトルに戻りますが、日本は果たして貧乏なのでしょうか?それともお金持ちなのでしょうか?
これだけだと広すぎるので、今日は「国債」に絞って話を進めます。
年に数回「国債残高〇〇兆円越え!国民一人当たり△△万円の借金!」なんて新聞に出るので、皆さんにもなじみのある言葉ではないかと思います。
突然ですが、「国債とは何ですか」と聞かれたら何と答えますか?
漢字からそのまま国の負債(借金)と答える方が多いのではないでしょうか?
しかし私はこの言い方はあまり好きではありません。
なぜなら国の借金=「日本という国」が「別の国から」借金をしている
というイメージにつながるのではと思うからです。
しかし実際には上のカギかっこの部分は2つとも正確ではありません。
では国債とはいったい何なのでしょうか?
そして日本という国は果たして貧乏なのでしょうか?
続きは次回です!
はじめに
はじめまして、ヒロと申します。
数年前に東京大学工学部を卒業し、今はとある会社でサラリーマンをしております。
これまで色々と「勉強」と名の付くものをやってきておりますが、いつも「難しすぎて理解できない」、「もっとわかりやすく説明してくれ」なんて思っていました。
このブログは自分がこれまで学んできたことや今話題のニュースなどをわかりやすく解説し、皆さんにシンプルに理解してもらおうと思って始めました。
皆さんが「よくわからないけど自分で勉強するのは面倒くさい」と思っていることを代わりに勉強するコーナーもできたらと思っているので、知りたいことがあったらリクエストお願いします。大学受験の勉強方法ってどうしたらいいの?とかでも大歓迎です。
気軽にのぞきに来てもらって、もしよかったらコメントをもらえると喜びます。
ではヨロシクお願いします!